不妊治療 ~AIH・IVF-ET・ICSI~
不妊症の治療には、大きくAIH(またはAID、人口授精)、IVF-ET(体外受精)、ICSI(顕微授精)といった方法があります。それぞれの特徴について記してみたいと思います。
(IVF-ET(体外受精)、ICSI(顕微授精)の総称をART(アート)といいます。)
AIH(Artificial Insemination by Husband)
AIH(Artificial Insemination by Husband)とは配偶者間人工授精のことで、採取した精子を子宮に直接注入する方法です。配偶者以外の場合は、AID(Artificial Insemination by Donor:非配偶者間人工授精)といいます。
日本では1948年、慶應大学病院でAIDをスタート、1949年に初めての成功例、現在では年間約1万人が人工授精で生まれているということです。AIHでの妊娠率は8~10%、これを20%に引き上げる為に併用するのが排卵誘発剤です。
排卵誘発剤の副作用には、卵巣過剰刺激症候群(卵巣が腫れて腹水や胸水がたまったり、尿が出にくくなったり、血液が濃くなり血栓ができたりする)、多胎妊娠などがあります。
また、3周期続けて行う場合も多く、3回までもしくは5回までが限界と説明されると思います。その理由は、排卵誘発剤により高リスクとなる多胎になる可能性が高くなること、AIHを続けて行うと抗精子抗体が2次的に作られる可能性が高くなること、4回以上AIHを行っても妊娠に至る確率が上がらないこと、などが挙げられます。
IVF-ET(In Vitro Fertilization Embryo Transfer)
IVF-ET(In Vitro Fertilization Embryo Transfer)とは、一般的に体外受精と呼ばれており、体外受精・胚移植のことです。
媒精は、採取した卵に精子をふりかけて、精子が自然と入っていくのを待つ方法で、1個の卵子に対し10万~20万の元気な精子が必要になります。成功した受精卵を、培養し分割させた後、子宮内へ移植します。
子宮内に移植する受精卵は原則1個です。2個以上のほうが当然妊娠率が高まりますが、多胎リスクも高まります。
1978年にイギリスで初めて体外受精児が誕生して以来、全世界で急速に普及し、日本では1983年に初めての成功例、現在では年間約1万8千人の赤ちゃんが体外受精によって生まれています。
ICSI(intracytoplasmic sperm injection)
ICSI(intracytoplasmic sperm injection)とは、顕微授精(細胞質内精子注入)のことで、顕微鏡で観察しながら、採取した卵に採取した精子を直接注入して受精卵をつくる方法です。
最初のヒトでの受精確認は1988年、妊娠例は1992年(日本では1994年に最初の出産、以降1995年から実施数が増える)、と、比較的新しい体外受精の方法です。
その為、ICSIで出生した子がまだ生殖年齢に達しておらず、生まれてきた子どもの安全と健康について、次世代への影響について未解決のままですが、世界的にもICSIの実施が増加しているとのことです。
その背景には、男性不妊の増加があるのではないでしょうか。
ICSIでは、卵子に直接精子を注入するので、卵1個に対し精子1個で良いのです。つまり精子が少ない状態、精子の運動率が悪い場合でも受精卵を作れる可能性が高いということです。
本来は受精能力のない精子、未熟な精細胞、DNA損傷などの精子機能を無視して授精が可能なこと、これらもきちんと理解して行うことが望まれます。
人工受精 AIH |
体外受精 IVF-ET |
顕微授精 ICSI |
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適応例 | セックスレス、勃起障害、卵管閉塞、免疫性不妊、精液量・精子濃度・精子数が少ない、など。 | 卵管閉塞、閉塞性無精子症、射精障害など。AIHで妊娠に至らなかった場合など。 | 乏精子症、精子無力症、精子奇形症など。IVFに必要な運動精子数が得られない、IVFで受精卵ができない場合など。 |
方法 | 体外にて採取した精子を、人工的に子宮に注入し体内受精を促す。 | 採取した卵子に、採取した精子をふりかけ、受精卵が出来るのを待つ。受精卵ができたら培養して子宮に戻す。 | 採取した卵子に、採取した精子を顕微鏡下で注入する。受精卵ができたら培養して子宮に戻す。 |
懸念事項 | 多胎率が高まる。流産・早産・奇形・胎児死亡・脳性麻痺の発生率が双胎では単胎の4~5倍、3胎は単胎の10倍といわれている。 | 一部の報告によると自然妊娠に比べ3割以上異常が起こる確率が高まる。 | 染色体異常、奇形率、異常遺伝子の次世代への影響、未確認のリスクなど。 |
不妊治療のリスク
人工授精も、体外受精も、顕微授精も、メリットと同様にリスクの説明をキチンと受けて理解して望まれると良いと思います。採卵時出血や感染、卵巣過剰刺激症候群、流産、異所性妊娠、多胎、染色体異常、或は未確認のリスクです。
また、不妊治療、外科手術は、心身に大きな負担をかけます。
その負担を軽減する為にも、万全の心身で妊娠の確率をあげる為にも、不妊治療と中医学(漢方薬・食養生・生活養生・鍼灸など)との併用は、最善の策となることをわたしたちは知っています。
どうぞ、お一人またはご夫婦で抱え込まずにお気軽にご相談にいらしてください。
あなた方ご夫婦に最善のご提案を差し上げます。
不妊治療中の養生法
穀類・旬の野菜・肉・魚、バランスの良い食事を摂りましょう
外食やコンビニ食、冷凍食品、お酒は控え、タバコはやめましょう
ヨガや太極拳、ストレッチを日課にしましょう
癒しの時間、ほっとする時間、思い切り笑える時間を一日一回はつくりましょう
寝不足、過労は厳禁、適宜休息をとって溜め込まないように
できるだけ大気汚染のない環境で暮らしましょう
どなたさまもお気軽にご相談にいらしてください。